イザベラ・バードの日本紀行 (下) (講談社学術文庫 1872)
イザベラ・バードの日本紀行 (下) (講談社学術文庫 1872)
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| 水晶から見える明治日本、そして現代の日本
紀行文に描かれる文章の善し悪しは、著者が見た情景が読者のイメージにいかに反映されるかにあると思う。その意味では、イザベラ・バードの紀行文は、あたかも純粋な水晶玉に映し出されるかのように鮮明に描かれている。
ただそれは、完全に客観公正という意味ではない。いくつかの箇所で、差別とも取り得る表現が見受けられるのは事実だ。しかし、これらは凝り固まった偏見によるものではなく、彼女自身の無垢な探求心が映し出したときに表れた表現であり、それゆえ反感を呼び出すことではない。無知による行き過ぎた表現は現代でも起こるものである。
彼女の探求心から生じる分析力は、時として読者の目を覚まさせる表現を生み出す。私はこの一文に現代の日本に通じる問題点を見抜いていたのではないかと、思わせる文章があった。
「頭脳の教育と活性化が人の特性とはほとんど関係なく行われている店、人間性のゆがみや矮小化が必ず起きるにちがいない点は要注意である。」
純粋な視点から思いがけない指摘を受けることがあることを想起させることに気づかされた。
イザベラ・バードの日本紀行 (上) (講談社学術文庫 1871)
イザベラ・バードの日本紀行 (上) (講談社学術文庫 1871)
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| 縦と横に広がる
バードが滞在した場所に、実際自分も住んでいたことがあったり、バードが見た同じ建物を時間を超えて自分も目にしたりしていて、不思議な感覚に陥りながら読みました。当時の不衛生な暮らしぶりや、病気の蔓延状況にバードのげんなりする様子が目に浮かぶようでしたが、蚤が飛びまわる布団とか、バードについてまわるやじうまとか、宿屋でどんちゃん騒ぎする人々の様子には、思わず笑ってしまいました。
紀行文って場所と時間の両方を伝えるものなんだなって、この本を読んで改めて感じました。
日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー)
日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー)
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| 東洋のアルカディアに生まれて
彼女にとっての「未踏の地」は、すでに何世代もの人々が歴史を築いている。
彼女はその歴史に触れる。僕らはそれを読み、喜びと、不快とを同時に受けることになるだろう。
彼女の感想は、西欧的だった。それは、今の僕らの感覚に近いだろうと思う。
文明開化、戦争、敗戦、高度経済成長、バブル崩壊。
時代を超えて、今の日本は確かに彼女が理想的だと思うような、技術や、生活が生産されただろう。
だが同時に、彼女が感嘆の声を上げた諸々の美しさは、もはや失われつつあるだろう。
彼女がアイヌを訪れる章は、日本人が失ったあらゆる素朴さを考えさせられる。
「祈りが空を穿つことができない世界、天の扉がすべて閉じられ、ただひとつ開いているのは傷つけられたものの涙が通る扉だけであるような世界、そのような世界について彼らが語るとき、彼らが教えているのはおそらくそのことである。」-レヴィナス-

