オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険
オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険
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| すべて全否定ではありません
面白い.これまでの筆者の印象は優秀な翻訳家というものであったが,この本は科学的な読み物として一級品である.ただ,論じられている研究・報告すべてが神話として全否定されているというのではなく,批判のレベルにはいくつかあることに注意が必要である.
(1)研究・報告のデータや写真が胡散臭いレベル
「オオカミ少女」「ポップコーンのサブリミナル実験」「バートのふたご研究」
(2)研究による結果の解釈が今考えるとオカシイと思えるレベル
「言語相対仮説」「心音説」「プラナリアの学習実験」
(3)メディアの効果によって話が誇大化してしまったレベル
「ワトソンのアルバート坊やの研究」
(4)現在では反面教師の例であり既に神話ではなくなっているもの
「賢い馬ハンス」
なお,筆者は原著にあたることを強く勧めており,早速アルバート坊やの原著を読んでみた.著者は,坊やは母親がちゃんといるのに,これまでの出版物では孤児のように扱われることが多いと嘆いていたが,私には孤児(あるいはそれに近い状態)であるように思われた.原著には「母親(mother)は施設(病院)の乳母である」と書かれているものの,その直前に「坊やは生まれてからずっと施設(病院)で暮らしている」とある.筆者の解釈に従えば,母親は住み込みで働いていて,そこで坊やが育ったということになる.それならもっと具体的な記述があるだろうし,motherには養育する人という意味もあるはずである.すぐあとには,「坊やはこれまで施設(病院)に連れてこられた中で,もっとも健康な一人」とされている.住み込みの母親と一緒にくらしている子供を,そのように表現することはないだろう.
少し皮肉っぽくなるかもしれないが,やはり原著にあたることは必要である.
人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか (認知科学選書)
人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか (認知科学選書)
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トーマス ギロビッチ | 新曜社 | 1993-06

| 社会科学者の役割。
論旨も明確で読みやすい。人間がいかに騙されやすいか、信じ込みやすいかということを科学的
に紹介してくれる。
超能力の問題、総合的健康法と呼ばれるものなど、具体例も豊富に解説されている。
マスコミなど、無数の事実の中から商業的に受ける内容、側面だけを故意に選んで、歪んだ
情報を流すというのは良くあることでしょう。
これだけたくさんの情報が氾濫し、インターネットの普及によって誰もが簡単に情報にアクセス
できる時代、社会科学者の役割は大きい。物事を正確に判断するための良書と言えます。
「集団主義」という錯覚―日本人論の思い違いとその由来
「集団主義」という錯覚―日本人論の思い違いとその由来
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| 「科学的データ」と「実感」の間にあるもの
アメリカは個人主義,日本は集団主義という一般的に受け入れられている概念を,実証的な心理学的研究をもとに否定している.質問紙による研究,実験による研究の多くが,この概念を支持しないことはとても興味深い.加えて,日本人が集団主義であるという概念が受け入れられることになった背景にも焦点をあて,社会心理学的な議論を展開している.十分説得力のある説である.
ただ,視点をずらして体験的に考えてみると,アメリカ人と日本人の周りとの接し方が異なることは事実のような気もする.アメリカ人の方が,かなりはっきりと物を言う.この矛盾はどこから来るのだろうか? 本当に錯覚なのだろうか? あるいは論じられている集団主義の定義自体が西洋的で,もっと別の定義が存在するのだろうか? たとえば,お互いに明確な意見を表明せずに相手を理解する土居健郎氏の「甘え」の概念を考慮すれば,考えを次第に共有していくという集団主義が考えられるのではないだろうか? ここで示されている研究が,そこまで対応できているかには疑問が残る.心理学でいう妥当性をどうとらえるかが,今後の課題ではないだろうか.
いずれにせよ,自分が所属する「日本人」という集団について科学的に思いを巡らすには格好の書物である.

